束芋展


本当はシーグラフに行くつもりだったんだけどチケットの値段が三万二千円とかPS3が買えるぞ的なのにびっくらこいて急遽横浜美術館束芋展に切り替えた。

エントランスが既にインスタレーションっぽくなってる。いつになく気合いが入っている模様の横浜美術館だ。

最初の展示を見た印象はガロっぽい鳥獣戯画かな。殆どの意匠は全く意味が分からないけど所々、あーこんなことが言いたいのかなってのがちらりほらりと見えてくる。自動車とセックスを結びつけた描写とか。昔はデートと言えば車だった、そういう意味なんかなとか思いながら眺めていた。

そんな意味性が明確に内包されたのが大型のインスタレーション作品「団断」だ。

1975年生まれの彼女は俺と同世代と言えないまでもかなり同じ文化を呼吸していたのだとおもう。だから彼女の紡ぎ出す世界は俺に懐かしさとか郷愁とかを感じさせてしまう。それはそれで楽しいのだが種明かしが判っている手品を見せられている気がしないでもない。作品から意味を排除すればそういう印象はだいぶ少なくなったのかな。

俺や彼女が吸い込んだ1980年代の文化というのは都市が万能な時代だった。けど、彼女の作品からは都市の特徴とされる事象が比較的シニカルに書かれているのが印象的だった。それは80年代の文化を空気のように吸い込んでいたときからなのか、後年に彼女が獲得したものなのか。

ちょっと辛口っぽく書いたけど展示会自体はとても楽しめたし束芋は力のあるアーティストだと感じた。まだ若いのでもっともっと成長して欲しい。有名になって欲しいって意味じゃなくて俺をもっと驚かせるようになって欲しい。と個人的な要望。