200km

かねてから計画していた那須高原行きを実行に移した。

目標は08/31にクローズするというニキ美術館だ。目標であって目的ではない。目的は100km/100mileの次に来るべき200kmクリアだ。ニキ美術館は行きたい場所ではあるが目的距離近辺の目標なのだ。ここで言う目的とは達成すべき「事」である。目標は達成すべき事を具象化した「物」だ。「事」と「物」でどちらが重要かというと俺にとっては「事」なのだ。「ニキ美術館に行く」というのは「物」ではないが「走る」と言うことに対してはそれに近い。

例えばフェラーリの車っていう「物」大切なのか、フェラーリで走るって「事」が大切なのかって例えれば判りやすいかも知れない。

当初のプランとしてはこうだ。自宅〜ニキ美術館で220キロ。ニキ美術館から黒磯の宿まで17キロ。黒磯から大洗まで行って111キロ。合計348キロだ。

さて、どういう装備で行くか。持って行く物の中に着替えを入れるかどうかってのが思案しどころである。着替えがなければいつも使っているヒップバッグで事足りそうだ。着替えがあるとリュックを背負うことになる。リュックは体温の放散を妨げるし色々と取り扱い面倒なので出来れば避けたい。通勤に使ってるメッセンジャーバッグは論外だ。あれは蒸れる。

着替えを持って行かないって事になるとずっとサイクルジャージとレーシングパンツで過ごすことになる。二日続けて同じ物を着るって事に関しては宿で洗濯すればいい。いずれも速乾性の素材なので問題ないだろう。けど、ずっと自転車の格好では、あまりかっこよくないってか、みっともない。途中リタイアするとなると電車に乗るし、現地で食事するときにその格好では辛い。

朝、四時に出発することを考えて三時頃に起きる。あれこれと準備をする。持って行く物の中に重量物は少ないが意外にアイテム数は多い。

持って行くためにリストアップしたアイテムは以下の通りだ。

自転車のために必要な物
タイヤチューブ/タイヤレバー/携帯用ポンプ/サイクルコンピュータ二個/ハートレートセンサー/グローブ/ヘルメット
暇つぶしのために必要な物
eee901(ネットブック)/emobile端末/ipod/ヘッドフォン/文庫本
必需品(?)
携帯電話/デジカメ/財布/鍵束
その他
着替え(Tシャツ・五分丈のパンツ・下着・靴下)/フェイスタオル数枚/リストバンド二個(汗拭き用)/サングラス

このうち、emobileの端末を忘れた。ネットブックを持ち歩いたのが無駄になったorz。

朝、四時に出発することを考えて三時頃に起きる。あれこれと準備をする。前の晩に準備しろと言う忠告は俺には無効だ。寝る前はほぼ例外なく酔っぱらってるのだ。飯食って持ち物準備して着替えて自転車の整備(タイヤ空気圧チェック・ブレーキチェック・注油)して出発したのは五時近かった。

さて、出発。朝焼けの中を走る。中原街道、環七、第一京浜、国道四号(日光街道)と進む。国道四号に入ってからはひたすらそこを那須塩原まで進む。

国道四号には旧道と新道(新国道四号)があるが旧道は信号が多そうなので新道を選んだ。率直に言って新道は退屈だ。風景の変化に乏しく起伏が少ない。ってか起伏が少ないって理由で国道四号を選んだので後者の理由は言いがかりに等しいけど。

あと、こんな立派な道路が必要なの?ってぐらい整備されていた。栃木に入る手前から宇都宮までの間は信号より立体交差の方が多いぐらい。しかもガラガラに空いてる。通ってる車は地元ナンバーが殆どだ。それであれば生活道路として沿道にもっと店舗なり施設なりがあっても良いと思うのだ。宇都宮までの間ではコンビニが3-4軒(登り方向沿道のみ)、ファミレスは一軒、ファーストフードがゼロ、道の駅が一軒って感じだ。旧道の慢性的渋滞解消のために作られたらしいがそれにしては過剰な道路だ。計画当初は交通量が増えるって見通しだったのだろうか。今となってはこれ以上、車が増える見込みは望めないだろう。

そんなことは置いといて国道四号を漕いで漕いで漕ぎまくる。ほぼ無風、吹いても追い風気味って好条件も手伝ってスピードもケイデンス(1分間にペダルを漕ぐ回数)も上がり気味だ。前半の深刻同四号ではケイデンス100〜105rpm、時速35〜38km/hぐらいで進んだ。それでも心拍数は145ぐらいだ。好調すぎるぐらい好調だ。

ところが異変は90キロ近辺で訪れた。膝が痛くなってきた。昼食を食いながらとか、数少ないコンビニで凍ったスポドリを買ってそれを膝の裏に当てたりしながら騙し騙し乗ってたけど段々と限界に近づいてくる。痛いときはどのくらい痛いかというと、クリートを外すときに足を軽く捻ってかちって外すんだけど捻りながら伝わってくる小さいショックに声が出そうになるぐらいに痛い。歩くときにビッコになってしまう。そんな状態で漕ぐなって事だけどせっかく得たこの機会を諦める勇気も持てない。負荷が軽い状態で80rpmぐらいのケイデンスで漕げばそんなにいたくないことを発見し、その状態で漕ぎ続ける。加速時にダンシング(立ち漕ぎ)を軽く入れれば何とか進める。けど長続きはしない。短いスパンで休憩を入れて少しずつ進むって方法を採らざるを得なくなった。

この状態ではとても山道の先にあるニキ美術館には到達できまい。それよりスピードが落ち休憩が増えた事で閉館時間に間に合わなくなった。途中で美術館を諦め宿への到達だけを目標にしたがそれすらもしんどかった。筋力や体力の限界より先に膝の故障が原因で諦めなくてはならないのは何とも悔しい。

さらに漕ぎながら絶望的な仮説が頭をよぎった。実は十年以上前に膝の手術をしていて俺の右膝は半月板がかなり切り取られている。「運動は軽いジョギング程度にした方が良いかも知れません。水泳や自転車は大丈夫だと思います。」って医者から言われた事を思い出した。当時、医者は100キロ以上走る自転車など想定していなかっただろう。膝の痛みが手術の後遺症だとすると厄介だ。治癒方法が無いって事になる。サドルを上げすぎて走っていた時期があってそのときも膝をいじめていたはずだ。そのダメージがジワジワと蓄積しているってのもあるだろう。暫くは無理せずに走るしかないのか。

そんなこんなで終盤は本当に苦痛に顔をゆがめながら宿に到着した。んで、温泉入って酒飲んでその日は終了。翌日、膝が痛くなければ何処かに回っていくことも考えたけど痛みはあまり引かないし天気も悪い。諦めてすごすごと新幹線で帰路につく。

目標はクリアできなかったし、予定したコースも全然回れなかったし、楽しいというか苦しいことが多かったけど達成感は不思議とあった。那須という車でも日帰りが困難な場所でありスキーとかで馴染み深い場所に自転車で行けたというのは大きい。自転車は空間認識を変えてくれる道具だ。また一つ、俺の中で空間が変わったのだ。新しい空間を手に入れるのは喜びだ。苦しかったけど楽しかった。

走行データ
走行距離:203.89キロ
走行時間:7時間29分32秒
平均速度:27.2km/h
平均ケイデンス:85rpm
消費カロリー:6244kcal


スタート直後の朝焼

やっぱり交通の要衝、日本橋を通らないと。

茨城県

栃木県

新幹線の一番後ろの座席を指定するとこんな風に自転車が置ける。

これは家の近くの電車にて。ストラップを使って電車の手すりに固定。空いているときに使える技。