新しい自転車を注文

昨日、トレックロードバイクを注文してきた。

道具は身体だ。マクルーハンが言うように道具は身体を拡張するために用いるのだ。野球をする人にとってバットやグローブは身体だ。楽器を弾く人にとってはその楽器が身体だ。わりと最近の脳科学の分野でそれらの道具を使うのに馴れるというのは、道具を脳内で実体化することだってのを何処かで読んだ。バットやグローブや楽器の形がニューロン結合で再現されるのだ。脳内で実体化できるそれは拡張された身体だとの認識は脳科学的にも正しいって事だ。

30過ぎてから常に自転車を所有していた。何台か乗り換えて乗り続けていたが本当にそのおもしろさを教えてくれたのは今のスペシャライズドだ。十数キロ程度しか走ったことがなかった俺を100キロ越えに導いてくれた。

スペシャライズドは随分と色々パーツを変更した。タイヤ、ホイール、ハブ*1ボトムブラケット*2、ステム*3、ペダルと靴等々。それらのパーツを換えるたびに走りが変わることが楽しかった。そんなに金をかけたつもりもないけど確実に買ったときの金額の三倍以上をつぎ込んでる。今から考えると最初からもっとしっかりした自転車を買うべきだったか。

俺がスペシャライズドを買ったのは二年弱前ってところだけど、随分と自転車を巡る環境は激変したものだ。あの当時、ロードバイクではなくてロードレーサーって呼び方が一般的だった。レース用の自転車。敷居がとても高い気がした。今は全然。メタボのおっさんもロードに乗ってる。俺も街乗りしかしないので本当はロードの方が良いのだ。けど、あの当時は踏ん切れなかった。今は遠乗りとかするとMTBの方が珍しい。周りはロードばっかりだ。

自転車のポジショニングの大切さを感じている。サドルの高さは当然としてハンドルバーの角度やステム、サドルの前後方向などを調節してベストポジションを探った。前回は行き当たりばったりで買って、それで後から調整して合わせていたけど、今度は割と慎重に調べた。体が大柄な俺に最初からきっちりあった自転車を手に入れたい。
ジャイアントとかだと3サイズぐらいしかない。最大サイズを選んでも俺の身長に適合するかわかんない。身長184cmの俺は一番大きなサイズの適合範囲に収まってはいるけど本当にベストのポジションが選べるかは疑問だ。一番細かくサイズ設定されているのがトレックだった。日本向けだと7種類用意されている。アメリカだと9種類あるらしい。なのでトレックにした。幸い、近所にトレックの正規販売店がある。フィッテングまでやってくれるようだ。

その店に行くといきなり股下のサイズを測られる。俺の股下は87cmだった。股下計られた後、店に置いてある一番大きいサイズでも俺には小さすぎるらしいけど、それであわせ込んで、肩までの距離とか腰の角度とかを見て最適なフレームを選んでくれる。スポーツバイクの購入としては専門店だったら当たり前なのかも知れないけど今までママチャリと一緒に売ってるような店で買ったので初めての経験だ。

ちょっと大袈裟な言い方をすると漕いでいるときの俺は移動する機械だ。マクルーハンの言う通り自転車が身体の一部と言うことも出来るけど、俺が自転車の一部なのかもって思うことがある。機械に対する隷属的な立場に墜ちるわけだがそれはかなり気持ち良い。移動する機械になった俺は空間に対する抑圧を解放させながら進むのだ。*4

自転車を買い換えるたびに俺の自転車はどんどんと身体に近くなる。ってか俺はどんどん自転車になっていく。多分、次の買い換えでより一層近づくことを期待している。手元に届くのは十日後ぐらいらしい。楽しみだ。

*1:前後の車輪の軸受け

*2:ペダルを漕いで回すクランクの軸受け

*3:フロントフォークとハンドルを繋ぐところ。ハンドルを固定する金具とか言えばわかりやすいか

*4:フロイド派の精神分析学者 岸田秀によると人間は先天的に空間に対する抑圧を感じているらしい。だから走ったり歩いたり乗り物にのってより遠くへとかより早くとかそういうことを求め続けるのだ